新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に係る法的問題

はじめに

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)(以後「コロナ」といいます。)に関連し,体温をはかって出勤停止としたり,テレワークを導入したりと,各企業で工夫をしていることかと思います。

もっとも,これらの措置について,ガイドライン等が乏しく,特に中小企業においては,見様見真似,よくわからずに行っているというのが実情ではないかと思います。

法的解釈においても,これまで先例のない事態ですので,解釈に疑義が生じる部分が少なくありません。

もっとも,全く指針がないよりは,ある程度指針があったほうが望ましいであろうということで,以下,コロナの問題に係る法的解釈の一例を示します。

上記のとおり,解釈に疑義が生じる部分が少なくありませんので,一例として,ご参考にしていただければと思います。

ということで,2020/4/6に公開したものでしたが,2年弱経過し,アップデートしてみます。

いろいろなケースがありますが,労働者が業務に関係なく新型コロナウイルスに罹患,あるいはその疑いが生じた場合を想定します。

労働者がコロナ陽性となった

労働者がコロナに罹患したことが明確になった場合です。

自宅待機命令を出し,賃金は原則支払不要。※就業規則でこの場合も支払う旨の定めがある場合あり。

保健所の見解等を参考に復帰時期を検討。

労働者にコロナ感染疑い

様々な理由により,労働者がコロナに感染した疑いがある場合です。

保健所基準で濃厚接触者であったり,症状が見られたり,特に何も無いが愁訴がある(自分でそう思っている)場合など,様々な事例があります。

就労不能

高熱があったり,身体が不調であったりして,就労できない状況であれば,欠勤と扱えばよいでしょう。賃金は原則として(就業規則に定めが無い限り)発生しません。

その後コロナに感染していることが明らかになった場合には,上記「労働者がコロナ陽性となった」の取扱いとなります。

就労可能となった場合は,以下の取扱いになります。

就労可能

コロナ罹患の疑いはあるものの就労可能な場合,原則としては,就労することになります。

ただ,ケースによっては,他の労働者の不安を惹起してしまうこともあり,就労という選択肢を採ることは難しい場合もあろうかと思われます。

一次的には,可能であればテレワーク,他者との接触がないあるいは少ない業務を感染対策を徹底して行うものとする,という対応が無難でしょう。

そのような対応が困難である場合,ケースによっては,就労しないことを前提に対応せざるを得ないこともあります。

自主的な欠勤

労働者本人が不安を感じ,欠勤するという場合もありえます。

この場合,有給休暇を使って欠勤するという選択もありえますが,会社として,これを強制することはできません。

有給休暇を用いないのであれば,賃金は発生しないのが原則です(就業規則による)。

自宅待機命令

労働者は就労を希望するも,事業所での感染拡大のおそれを予防するため,自宅待機命令を出すこともありえます。

この場合,民法536条2項により,全額の賃金支払義務があるとの考えもありえますが,同条項の要件は満たさず,労働基準法26条により,平均賃金の60%の休業手当の支払義務があり,これで足りるとの考えもあります。

厚生労働省等は,100%の休業手当金の支払を推奨しています。

いずれにしても,雇用調整助成金による填補があり(少なくとも現状では),会社側の実質的負担は軽減(免除)されます。

この雇用調整助成金の施策も,会社が安全な対策を行うことができるよう,という趣旨であると思われるため,これに沿って100%の賃金(休業手当)支払をするのがよいと考えます。

就業規則にその旨を定めておくことになろうかと思います。

その他

新型コロナウイルスに基づく政府の宣言や措置により,会社の営業を停止しなければならなくなった場合,業務上コロナに罹患した場合等様々なケースがあります。

いずれのケースも明確な正解が用意されているわけではないのが難しいところですが,専門家に相談する等して対応していただければと思います。

 

以上,2020/4/6のものを2022/1/19に大幅に改訂しました。

以下,従来よりあるテレワークの留意点です。

テレワークの留意点

実務上の運用について

テレワークは,コロナに罹患している疑いのある労働者の出勤を避けることができ,また,通勤によるコロナに罹患するリスクを軽減することができるため,安全配慮義務の観点から望ましい措置であるといえます。

もっとも,多くの企業において,テレワークは,就業規則上も実務上も前提としない就業形態であると思われ,混乱を招かないように注意する必要があります。

今から就業規則を検討して定めることができる企業であれば,テレワークの働き方,光熱費や使用する機材の負担について等を定めておくことが望ましいといえます。

そのような余裕がない場合でも,個々の従業員と合意書をかわす,マニュアルを作成して配るなどトラブル防止のための措置を講じておく必要があると考えられます。

この点は,緊急避難的措置であるということに鑑みて,走りながら,運用しながら定めていくというものでもやむを得ないのではないかと思います。

労働法規への適合について

緊急時といえども,法律の適用が排除されるわけではありません。

特に強行法規である労働法規の適用については,気をつける必要があります。労働時間管理をする仕組みをつくり,労働者の健康に配慮することが必要です。

少なくとも,休日労働,時間外労働の管理は徹底する必要があります。

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