様々な解雇の態様の整理

質問

弊社の従業員の退職について,普通解雇,懲戒解雇,整理解雇,自主退職,諭旨退職,諭旨解雇とあると思いますが,それぞれどういう意味でどういう場合に退職が認められることになるのか,よく分かりません。分かりやすく教えてください。

弁護士の回答

確かに,退職を巡る問題は,整理の仕方も様々であり,一見して理解することが容易なものではないですね。

少し整理してみましょう。

解雇の種類と解雇の要件

解雇には,法的あるいは社会的に様々な種類が存在します。

その違いや,いかなる場合に解雇できるのかは極めて難しいものです。

一覧性のある表にまとめてみました。

 労働者の退職意思就業規則解雇予告法令上の解雇制限に違反しないこと解雇権濫用にあたらないこと
普通解雇×△原則として必要産前産後の休業中・業務上災害による療養中の解雇,労働者が労働基準監督機関に申告したことを理由とする解雇等「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」(労働契約法16条)
懲戒解雇×△原則として必要産前産後の休業中・業務上災害による療養中の解雇,労働者が労働基準監督機関に申告したことを理由とする解雇等「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」(労働契約法16条)
整理解雇×△原則として必要産前産後の休業中・業務上災害による療養中の解雇,労働者が労働基準監督機関に申告したことを理由とする解雇等「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」(労働契約法16条)
自主退職××××
諭旨退職(諭旨解雇)×××但し,注意×但し注意

以下,それぞれについてみていきます。

普通解雇

普通解雇とは

普通解雇は,労働者の自発的な退職の申し入れによらずに,労働者を会社から一方的に退職させる行為です。

他の解雇類型にあたらない場合に,普通解雇と呼ぶことが通常です。

法律的には,会社側から労働契約を解除する行為をいいます。

たとえば,労働者が勤務不良の場合等に検討されます。

就業規則上の根拠

原則として,就業規則上の根拠が必要とされます。通常は,就業規則上に解雇事由を列挙してあり,その他一切の就業を継続するに困難となる事由等の包括的な文言が定められています。通常はそこに当てはまるとして就業規則上の根拠は認められるでしょう。

但し,就業規則上に根拠がなくても,民法上会社に労働契約を解除する権利があるとして,解雇が認められる場合もあります。

解雇予告

普通解雇するためには解雇予告をする必要があり,解雇予告をしない場合は所定の解雇予告手当金を支払う必要があります。

労働基準法

第20条  
使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少くとも三十日前にその予告をしなければならない。三十日前に予告をしない使用者は、三十日分以上の平均賃金を支払わなければならない。但し、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合又は労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合においては、この限りでない。
前項の予告の日数は、一日について平均賃金を支払つた場合においては、その日数を短縮することができる。
前条第2項の規定は、第1項但書の場合にこれを準用する。

法令上の解雇制限に違反しないこと

産前産後の休業中・業務上災害による療養中の解雇,労働者が労働基準監督機関に申告したことを理由とする解雇等法令上解雇を制限している場合には解除することができません。

解雇権濫用にあたらないこと

 

普通解雇と同様,解雇権濫用にあたるか否かは極めて難しい判断が必要です。

過去の裁判例の集積である程度傾向が予測できるとはいえ,事案ごとのケースバイケースの判断となってきます。

様々な要素を総合考慮して判断することになります。

考慮要素について,また別立てで,解説させていただこうと考えています。

懲戒解雇

懲戒解雇とは

懲戒解雇は,労働者の自発的な退職の申し入れによらずに,懲戒権の行使として,労働者を会社から一方的に退職させる行為です。

たとえば,労働者に著しい非行行為があった場合等に検討されます。

就業規則上の根拠

就業規則上の根拠が必要とされます。

普通解雇のような例外はありません。

仮に就業規則の定めがない場合に,懲戒解雇を検討するのであれば,懲戒解雇はできないので,普通解雇として行うことになるでしょう。

就業規則上の定めは限定列挙と解されるため, 就業規則上に定めのない事由に基づく懲戒解雇は,認められないことになります。

解雇予告

懲戒解雇する場合でも,解雇予告をする必要があり,解雇予告をしない場合は所定の解雇予告手当金を支払う必要があるのが原則です。

労基署との関係で,除外認定を受けて解雇予告手当を免れる途もあります。

法令上の解雇制限に違反しないこと

産前産後の休業中・業務上災害による療養中の解雇,労働者が労働基準監督機関に申告したことを理由とする解雇等法令上解雇を制限している場合には解除することができません。

解雇権濫用にあたらないこと

これが,現時点において,明文化された解雇権濫用の場合には無効とすると定めた規定です。

解雇権濫用にあたるか否かは極めて難しい判断が必要です。

過去の裁判例の集積である程度傾向が予測できるとはいえ,事案ごとのケースバイケースの判断となってきます。

様々な要素を総合考慮して判断することになります。

考慮要素について,また別立てで,解説させていただこうと考えています。

整理解雇

整理解雇とは

整理解雇は,労働者の自発的な退職の申し入れによらずに,人員整理を理由として労働者を会社から一方的に退職させる行為です。

たとえば,何店舗も有していた会社が,その内の店舗を閉鎖することに伴って,労働者を減らす必要がある場合等に検討されます。

就業規則上の根拠

原則として,就業規則上の根拠が必要とされます。通常は,就業規則上に解雇事由を列挙してあり,その他一切の就業を継続するに困難となる事由等の包括的な文言が定められています。通常はそこに当てはまるとして就業規則上の根拠は認められるでしょう。

但し,就業規則上に根拠がなくても,民法上会社に労働契約を解除する権利があるとして,解雇が認められる場合もあります。

解雇予告

普通解雇するためには解雇予告をする必要があり,解雇予告をしない場合は所定の解雇予告手当金を支払う必要があります。

法令上の解雇制限に違反しないこと

産前産後の休業中・業務上災害による療養中の解雇,労働者が労働基準監督機関に申告したことを理由とする解雇等法令上解雇を制限している場合には解除することができません。

解雇権濫用にあたらないこと

整理解雇についても,「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合」には,解雇権濫用として解雇は認められないこととなります。

 この 「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合」 か否かについて,裁判例の集積により,ある程度要件が明確化しています。

人員削減の必要性

客観的な人員削減の必要もないのに,解雇したいが故に,整理解雇の外観を作出しても,それは認められません。
人員削減の必要性を明らかにできる客観的資料があるとよいでしょう。

たとえば,上記例のように店舗を閉鎖したというのであれば,その事実が明らかになる資料がこれにあたります。

解雇回避努力の履行

人員削減の手段として整理解雇を断行する前に,より緩やかな手段の検討を行い,解雇回避に向かった努力を実践しているか否かが要素となります。

ここでも,解雇回避に向けて行った行為を記録化しておくとよいでしょう。

たとえば,希望退職者を募ったり,従来の配置と異なる配置での雇用を検討したりしていれば,解雇権の濫用には当たらない方向に進む要素です。

人員選定の合理性があること

人員選定について,合理的な基準で公平性が保たれた形で選定されていることが必要です。

特定の者を狙い撃ちにした整理解雇は,認められない可能性が大きくなります。

たとえば,店舗を閉鎖する場合に,その店舗の営業と全く関係のない今後も従来と変わらず継続する事業に携わる人員を選定することには原則としては合理性がないでしょう。

手続の相当性・妥当性があること

整理解雇に至る過程で適正な手続を経る必要があります。

解雇しようとする労働者に対して,十分に説明を施したり,労働組合にも説明したりという行為です。

たとえば,人件費との関係で会社を維持するためには店舗を閉鎖せざるを得なくなり,その結果,30人の人員を解雇せざるを得ない。退職希望者を募ったが,それでは満たされず,他に収容できる部署を検討したが,どこも人員過多であるから,閉鎖店舗で就業していたA労働者を整理解雇せざるを得ないと考えている,などと説明をすることです。

自主退職・諭旨退職・諭旨解雇

自主退職とは,労働者の自発的な退職の申し入れにより,労働者と会社との労働契約を終了させる行為をいいます。

諭旨退職・諭旨解雇は,明確な定めがありませんが,多くは,労働者に非行があるが,反省の意を示し,退職を甘受する意向がある場合,非行の内容に鑑みて解雇事由といえるか明らかでない場合などに,温情的にあるいは安定的解決のために,会社が懲戒権を行使する前に労働者に対して説諭し,その結果労働者が自主退職を申し出るということを意味しています。

 

解雇ではないので,解雇予告の関係,解雇制限の関係,解雇権濫用の関係は問題がありません。

多く見られるのは,会社としては解雇したいが,解雇の場合,上記のような制約があるので,法的安定性が得られない,また,労働者のことを考えても,自主退職という結論を採った方がよいために結果として自主退職になるという事例です。

今日において,会社が労働者に対して退職を勧めるということは違法となるのではないでしょうか。

この点については,以下で詳述しています。

 

 

 

 

付記すると,解雇すれば法令上の解雇制限に違反する場合,解雇権濫用にあたる場合というのは,通常,労働者が解雇を納得しない場合であるともいえます。

そのため,そのような状況下で自主退職をするというのは想定し難いともいえます。

このことから,そのような状況下で退職勧奨する場合には,より一層労働者の自由意志を阻害しないように注意する必要があると考えられます。