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横領した従業員に退職してもらいたい

質問
質問

弊社の従業員が業務上横領をしていた事実が明らかになりました。弊社としては,懲戒解雇とするよりも,諭旨解雇としたいと考えていますが,どうしたらよいでしょうか。自分から辞めてくれるようにしたいです。

弁護士の回答
弁護士の回答

諭旨解雇とは,様々な意味で用いられる概念ですが,会社からの懲戒権の行使としてではなく,自発的に退職して欲しいということですね。

それを前提にアドバイスします。

諭旨解雇とは

諭旨解雇とは,法律上の用語ではなく,様々な意味で用いられます。

多くは,労働者に非行があるが,反省の意を示し,退職を甘受する意向がある場合,非行の内容に鑑みて解雇事由といえるか明らかでない場合などに,温情的にあるいは安定的解決のために,会社が懲戒権を行使する前に労働者に対して説諭し,その結果労働者が自主退職を申し出るということを意味しています。

すなわち,労働者に対し,退職勧奨によって退職を促すこととなります。

退職勧奨は違法ではないか。

今日において,会社が労働者に対して退職を勧めるということは違法となるのではないでしょうか。

退職強要は違法

前提として,労働者自らの意思で退職することを強要することは違法です。

会社が労働者を解雇したいのであれば,解雇の要件に沿う形で解雇することが必要です。

退職勧奨は必ずしも違法ではない

一方,退職勧奨は必ずしも違法ではありません。

労働者に対し,退職を勧め,労働者が自由意思に基づき,真意で退職を選択するのであれば,その意思選択は尊重されるべきです。

裁判例にも同様に解しているものがあります。

東京地方裁判所平成23年12月28日判決(通称 日本アイ・ビー・エム退職勧奨事件)http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/338/083338_hanrei.pdf

退職勧奨は,勧奨対象となった労働者の自発的な退職意思の形成を
働きかけるための説得活動であるが,これに応じるか否かは対象とさ
れた労働者の自由な意思に委ねられるべきものである。したがって,
使用者は,退職勧奨に際して,当該労働者に対してする説得活動につ
いて,そのための手段・方法が社会通念上相当と認められる範囲を逸
脱しない限り,使用者による正当な業務行為としてこれを行い得るも
のと解するのが相当であり,労働者の自発的な退職意思を形成する本
来の目的実現のために社会通念上相当と認められる限度を超えて,当
該労働者に対して不当な心理的圧力を加えたり,又は,その名誉感情
を不当に害するような言辞を用いたりすることによって,その自由な
退職意思の形成を妨げるに足りる不当な行為ないし言動をすることは
許されず,そのようなことがされた退職勧奨行為は,もはや,その限
度を超えた違法なものとして不法行為を構成することとなる。

」 (裁判所webpageより)

退職勧奨が違法となるかどうかの判断要素

退職勧奨が違法となるかどうかの判断要素としては,様々な要因がありますが,端的にいえば, 労働者が自由意思に基づき,真意で退職を選択したといえるか否かであると考えられます。

具体的には以下のような要素を斟酌して総合考慮することになるでしょう。

退職勧奨の原因

退職勧奨の原因として,何も無いのに退職勧奨をするのであれば,労働者は,通常は退職を望まないでしょうから,違法の方向に進むでしょう。

他方で,退職勧奨の原因として,著しい非行が存する場合,退職しなければ解雇される可能性が大きいため,労働者としては自ら退職して退職金だけは確保しよう等退職を決断する動機があることになるため,退職勧奨が許容されやすい方向といえます。

退職勧奨の態様

上記裁判例でも「 そのための手段・方法が社会通念上相当と認められる範囲を逸 脱しない限り」と判示しているように,退職勧奨の態様も重要です。

たとえば,大きな声で威圧する,人格非難の言辞を用いる,脅迫的言辞を用いる,執拗に長時間行う,労働者が退職しない意思を表示しているにも関わらず何度も行うなどの行為は違法に繋がる行為です。

要するに,常識的な範囲で退職を勧めていれば問題はありません。

退職勧奨にあたって注意すべきこと

退職勧奨にあたって注意すべきことをまとめると,以下のとおりです。

退職勧奨の理由を明確に客観的に

上記のとおり,退職勧奨の理由もないのに退職勧奨をすることは違法方向の要素です。

また,退職勧奨の理由があるといっても,それが主観的なものであり,合理性がなければ,やはり違法の方向に進んでしまいます。

Aの話によるとBが悪いからBを退職勧奨する,というような場合です。

真に退職勧奨の理由が存在するのか慎重に精査し,できれば客観的証拠を確保した上で行うのが望ましいといえます。

客観的証拠とは,たとえば横領であれば防犯カメラによる現認記録,たとえば飲酒運転であれば,飲酒検知機器による検知結果,社内ストーカー的な行為であればメールやSNSの送信(受信)記録等です。

常識的な態様で行う

労働者が自由意思に基づき,真意で退職を選択したといえるか否かがポイントですので,自由意思を妨げる行為は禁物です。

自由意思が妨げられるかどうかは,人によって差異があり,一律な基準は設けられません。社会通念によって判断されるものですが,パワハラやセクハラと同様,感じる側が強い嫌悪感を感じるのであれば,感じさせた側がそう思わなくても要注意です。

必要以上に慎重に,より良識的行動をということを念頭に行う必要があります。

そのためには,立場の異なる複数人で行うことも有効な場合があります。他方で,退職勧奨を受ける労働者のプライバシー権の問題も考える必要もあるため,大勢の他の労働者の前で公開で行うことは避けるべきでしょう。

録音をする旨を宣言し,録音するのも1つの方策でしょう。録音していることを強く認識することにより,物の弾みで声を荒げてしまうということも抑制されます。

「●●」という言葉があると違法となるという情報に接することがあると思います。よほどの悪辣な語句であれば別ですが,一般にある言葉のみをもって判断するのではなく,様々な言動をはじめとする多要素を総合考慮して判断されます。

そのため,言ってよい言葉がこれで,言ってはいけない言葉がこれというように明確に定まるわけではないことにご注意下さい。

ただ,やはり,危ない語句は使わないようにした方がよいことは言うまでもなく,要するには,より良識的行動をということだろうと思います。

退職の動機づけを明確に

労働者が自由意思に基づき,真意で退職を選択したといえるためには,労働者に自ら退職を選択する動機が必要です。

何もメリットがないのに退職を勧められたから退職するという労働者は存在しにくいです。

そのような場合,「退職を強要された」と感じることも多いのではないでしょうか。

たとえば,退職勧奨に応じれば退職金が支給されるが解雇なら支給される,退職勧奨に応じれば横領した事実は秘匿する等です。

記録化する

退職勧奨が違法であるかどうか判断する時点は,退職勧奨が行われた時点よりも後のことです。

判断の際に,当時の事情を明らかにする資料が無ければ,適正に行ったものでもそれを証明できなくなるというおそれがあります。

そのため,記録化しておくことが極めて重要です。

上記のように,退職勧奨の状況を録音・録画しておく,いつどこで誰がどのように退職勧奨を行い,どういう結果となったのかを記した書面を作成する,できれば本書面は,退職勧奨を受けた労働者の間違いない旨の署名を貰っておくと本書面の内容についての争いも抑止されますので,最良といえます。

退職勧奨が上手く行かなかった場合

 

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