B社に部品を売ったが,売掛金が回収できない!
B社社長は自社も売掛金の回収ができないから待ってくれと言っています。
待っているのですが,支払われる見込がなさそうです。
どうしたらよいのでしょうか。
売掛金の回収ができないというご相談はよくある相談です。
弁護士としては,よくある話ですが,中小企業にとっては,大きな悩みとなってしまいます。
そこで,売掛金の回収ができない場合を含め,債権回収について,ご説明します。
弁護士による交渉
支払われる可能性はあるが,それほど大きくないと言わざるを得ません。
後にご説明する他の方策による場合のリスク,破産のリスク等に照らし,減額してでも一定金額を回収して解決することも有用である場合があります。
訴訟提起
流れ
- 訴訟提起訴状を裁判所へ提出
- 審理裁判所で,当事者双方が主張・立証
→途中で和解(当事者双方が互譲して,合意して解決)の可能性
- 判決裁判所が判断
訴訟遂行上の問題
・証拠の問題(全ての取引について,いつ何をいくらで)
※証拠裁判主義,証明責任の原則
相手方の態度等に拠りますが,原則として,請求権について,証拠に基づいた証明が必要です。証拠が無い場合,勝訴できない可能性もあります。
・相手方の抗弁
訴訟となった場合,相手方が事前に想定していないような自己に有利な主張をする可能性があります。その場合,かかる主張を排斥する必要が生じることもあります。
和解
・和解の優越性
判決を得ても自動的に回収できるわけではないため,和解による任意の支払の方が優れている場合が多いです。
ただし,和解したとしても,分割支払の場合は支払われなくなる可能性があり,どのような和解をするかは工夫を要します。
判決
・判決による解決の限界
・強制執行が必要となる場合
上記のとおり,判決を得ても自動的に回収できるわけではありません。
判決にしたがって支払うか否かは相手方次第です。
判決を得ることによって,強制執行が可能となります。
判決を得ても相手方が支払ってこない場合,強制執行をしなければ回収することができません。
なお,判決を得ることによって,権利が確定し,少なくとも10年間存続します。
強制執行
強制執行とは
相手方の不動産,預金,債権等を差し押さえること。各々の定められた方式で換価して回収します。
強制執行が機能する場面
相手方に財産があり,その財産の存在を把握出来ている。
裏を返すと,財産の存在を把握できない場合,強制執行は必ずしも有用な途となりません。
相手方会社の第三者に対する売掛金の存在を知っており,これを差し押さえる場面などでは,大きな威力を発揮します。
財産開示手続
判決を得た後に相手方に財産の開示をさせる手続です。
法改正により,実用化が進められてはいるものの,実効性に疑問が残るケースが多いです。
仮差押
仮差押とは
強制執行に備えて,預金や債権,不動産等を訴訟前に処分を禁じる手続。
強制執行の予約のようなイメージをもたれると分かりやすいと思います。
仮差押手続の流れ
・仮差押→訴訟提起→判決→強制執行という流れが原則
・担保金が必要
相手方に財産がある場合は,訴訟をまたずに和解により一挙に解決することもあります。
破産の問題
相手方が破産手続開始した場合,破産手続の中で配当を受けるという形でしか債権回収はできないこととなります。
配当がないケースも多く,あったとしても僅かな金額であることがほとんどです。
相手方が破産手続開始するまでに回収できればよいですが,そうでなければ,いかなる手続を採っても同様の結果となります。
考察
上記のとおり,種々の方策を検討し,選択することになります。
もっとも,その場合も,相手方の財産を把握している場合は別として,そうでない場合,回収できるか否かは不明確です。
訴訟提起をすると,和解できることも多いですが,判決を得ても,強制執行は奏功し難く,回収は困難であることもあります。
相手方が破産手続をする可能性もあります。
最終的には,回収不能リスクをふまえたうえで,どこまでやるのか,費用対効果をどう考えるのかというご判断であると思います。
※上記は,相手方が法人ではなく,自然人(人)である場合にも妥当します。