掲示板に誹謗中傷を書かれた場合の対処法

Update


H28.2 google inc.を相手に検索結果削除仮処分申立(名古屋地裁)→即時抗告の結果,名古屋高裁で敗訴
H29.7- 2ちゃんねる(2ch.net)が任意の削除に応じるようになる。
H29.10- 5ちゃんねる(5ch.net)も任意の削除に応じる。
H29.10 2ちゃんねる(2ch.sc)を相手に投稿記事削除仮処分申立(名古屋地裁)→削除(http://macaron.2ch.sc/test/read.cgi/saku2/1510646248/l50
H30.3  2ちゃんねる(2ch.sc)を相手に投稿記事削除仮処分申立(名古屋地裁)→削除

はじめに


今日,インターネットを通じ,個人が情報発信をすることが容易となっています。
その副作用として,インターネット掲示板において,法人・個人に対する真実ではない事実の摘示など(誹謗中傷行為)をされ,法人・個人の名誉権,人格権,商標権等を侵害され,また,営業を妨害されるという事象が頻繁に見られるようになりました。

インターネットは,グローバル(世界中に把握しうる),永続性(消えない),簡便性(パソコンさえあれば,いやスマートフォンからでも,容易に行為しうる。),匿名性(表面的には,誰が行為主体であるかの判別が困難。)を有しているため,簡単に誹謗中傷行為が為され,いったん誹謗中傷行為が為されれば,その結果は継続し,その被害者たる法人・個人の受けるダメージ,損害は計り知れないものです。

実社会では想像だにしないような悪辣な言葉が,実社会では想像だにしないようないわゆる普通の人により為されます。
それを見たいわゆる普通の人は,被害者たる法人・個人に対して悪感情をもってしまいがちです。

今日では,消費活動等において,先方をインターネットで検索し,調べるという行為は一般的になってきているといっても過言ではなく,そのような検索の際に,誹謗中傷行為が顕れれば,消費活動等を躊躇わせる要因となってしまいます。特に被害者が営利主体である場合,その傾向は顕著です。

このようなインターネット社会の現実に対して,気にしないのが一番である,受け手が誹謗中傷行為をスクリーニングして情報を選別するから放置して良い,というのも一つの考え方として存在します。
しかしながら,現実問題として,いわゆる普通の人,特に若年層は,インターネットを情報源の一つとしており,その情報をそのまま受入れる傾向にあるというのが実際のところであると思料されます。
そのため,上記に述べた被害は,被害者にとっては現実的なものです。一方で,誹謗中傷行為は刑事責任(名誉毀損罪,業務妨害罪等)をも問われるものであり,決して許されるべきものではありません。

誹謗中傷行為に対しては,適切に,毅然とした対応をすべきです。

具体的には,
1 事後策としての削除
2 将来の被害発生の防止策としてのIP開示請求等があります。

以下,詳細を解説します。
解説をとばして結論をみる。

削除(事後の対策)

1 掲示板管理者に対し,訴訟外で削除請求


まずは,掲示板管理者に削除の請求をします。

アプローチの方法は,メールあるいは書面で行います。
管理者によっては,書面を要求しているところも存在しますし,管理者の表記が存在しない場合,管理者を調べたうえで,書面でアプローチすることが必要となります(プロバイダ責任法に沿った請求は後掲)。

被害者本人が行うことも可能ですが,弁護士の代理を要求しているところもあります。

本来,被害者の権利侵害が明白である場合には,管理者自らが削除すべきですし,削除の請求方法に限定をすることに合理性はないと考えます。
しかしながら,訴訟外の段階で任意に削除してもらうには,相手(管理者)にあわせる必要がありますので,決められた削除方法にしたがうのが無難です。

大規模な掲示板の場合には,いわゆるプロバイダ責任法(特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律)に基づく運用を採っていることが通例です。この場合,記載要件を備えた書面で削除を請求します。

掲示板管理者が権利侵害が明白でないと判断する場合には,掲示板管理者が誹謗中傷行為の加害者本人に対し,照会をします。照会の結果,加害者が同意すれば削除されます。
もっとも,その照会により,加害者自らが誹謗中傷投稿を削除することもあります。照会により,加害者に対し,自己の行為が法律上許されない違法行為である可能性があることを再認識させることができる為であると思料されます。
このように,加害者に対し,違法行為であることを認識させることは将来における誹謗中傷行為の予防につながるため,非常に重要なポイントです。

2 掲示板管理者に対し,削除の仮処分を提起

上記1で削除されない場合,削除の仮処分というものを裁判所に申立てる必要があります。

簡単に言えば,表現の自由と被侵害利益のどちらが優越するか,という観点から判断が為されます。

原則として,被害者の方の住所地を管轄する裁判所で行うことができます。
印紙代として2000円,仮処分担保金(仮処分を求めることにより,相手方に損害を及ぼす場合に備えて裁判所に納める金銭。通常は返還されるため,一時的に用意する金銭です。)として30万円程度(裁判所が決定します。)。その他,郵券,実費,弁護士に依頼する場合には弁護士費用が必要です。

2ちゃんねるの場合は,シンガポールに存在する「パケットモンスター」という会社が形式的な管理主体とされていたため,パケットモンスターを相手に原則として東京地裁に仮処分申立をする必要がありました。そのような状況の際に,削除の仮処分が認められた経験があります。しかしながら,現状では,「2ch.net」のドメインは「Racequeen,Inc」が所有しているものとされるなど,管理状況が不透明であることから削除が困難な状況です(平成26年9月時点)。
現状では,理論上は可能ですが,5ヶ月以上も期間を要するため,実際上使うことが困難な状況です(平成27年11月時点)。

※「2ch.sc」については通常の仮処分手続が可能です。

3 削除された場合の後処理

削除が為された場合には,その投稿そのものが消えます。
しかしながら,検索エンジンの検索結果ページにまだ出てきてしまうという悩みを聞くことがあります。
これは,一定期間毎にクロール(情報収集)をしてそれを基に検索結果を表示するという検索エンジンの仕組みによるものです。一定期間(必ずしも一定しているわけではない)が経過すれば出てこなくなります。
より迅速に,という方には,情報収集を促し削除を促進する仕組みもあります。

また,基となる書き込みを削除しても,いわゆるまとめサイトに転載されているというケースもあります。このようなケースは,いわゆるまとめサイトについても,掲示板と同様,まとめサイトの管理者に削除請求をすることで対応します。

今あるものの削除が完了しても,将来の書き込みが不安であるという場合,次にご説明します将来の防止策を採ることが考えられます。

将来の誹謗中傷対策(IP開示請求等)

1 掲示板管理者に対して任意のIP開示を請求)

まずは,掲示板管理者にIP(162.15.84.XXXなどというインターネット上の住所のようなものであり,加害者の特定の為に必要不可欠な情報。投稿時間等他の情報と併せることで,投稿者が誰かを特定する材料となります。)開示の請求をします。

小規模な掲示板では,任意にIPを開示してくることが通例です。この場合の方法は,削除の場合と同様です。
他方,大規模な掲示板の場合には,いわゆるプロバイダ責任法に基づく運用を採っていることが通例です。この場合も,削除の場合と同様です。
ただ,IP開示は,加害者が違法性を(再)認識したとしても,削除のように加害者自らが実現可能なものではないことから,任意にIP開示を受けられる可能性は,削除の場合と比べて小さくなります。

2 掲示板管理者に対してIP開示の仮処分を提起

上記1でIP開示されない場合,IP開示の仮処分というものを裁判所に申立てる必要があります。
なお,IP開示を求める場合で削除と同時に開示されない場合には,ログ(IP等が記録された情報データ)を保存しておくよう求める必要があります。

ここでも,簡単に言えば,表現の自由と被侵害利益のどちらが優越するか,という観点から判断が為されます。

原則として,掲示板管理者の住所地を管轄する裁判所で行うことになります。
印紙代として2000円,仮処分担保金(仮処分を求めることにより,相手方に損害を及ぼす場合に備えて裁判所に納める金銭。通常は返還されるため,一時的に用意する金銭です。)として30万円程度(裁判所が決定します。)。その他,郵券,実費,弁護士に依頼する場合には弁護士費用が必要です。

※2ちゃんねるの状況は上記のとおり,以前行った際は,「パケットモンスター」相手に仮処分をし,無事開示されました。

3 ISPに対して任意の発信者情報開示を請求

掲示板管理者よりIP開示を受けた後,そのIP等の情報を基に,インターネットサービスプロバイダ(ISP)を特定し,ISPに対し,発信者情報(誹謗中傷行為をした加害者は誰か)の開示を求めます。インターネットサービスプロバイダとは,掲示板管理者等のコンテンツプロバイダとは別のインターネット環境の提供者であり,たとえばNifty,OCN,Yahooなど,一般的にプロバイダと言われている会社です。IPはISP毎に付与されるものですので,IPからISPを特定することが可能です。
ISPが,保有しているIPと投稿時間等の情報を基に,契約者の情報を辿れば,発信者(加害者)が特定できるのです。

いわゆるプロバイダ責任法に基づく運用を採っていることが通例であり,基本的には,上記1の大規模な掲示板の場合と同様です。
ISPが権利侵害が明白と判断しない場合には,加害者が自己の情報の提供に同意することは考え難く,発信者情報開示の訴訟を裁判所に提起する必要があります。

なお,ISPがログ(IP等が記録された情報データ)を保存する期間は3ヶ月から6ヶ月と短い場合もあります。既にログが消除されていれば,開示を求めることはできません。
訴訟に備えて,ログを保存しておくように請求しますが,ISPが任意に保存しておくことに応じない場合には,ログ保存の仮処分が必要となる場合もあります。

※プロクシと言われる中間プロバイダを介する手法でIP偽装をしている場合,諸外国のプロバイダを中間に入れており,発信者情報開示請求が困難な場合があります。

4 ISPに対して発信者情報開示の訴訟を提起

上記3でIP開示されない場合,発信者情報開示の訴訟を提起する必要があります。

ここでも,簡単に言えば,表現の自由と被侵害利益のどちらが優越するか,という観点から判断が為されますが,その判断は,仮処分の場合に比べ,判断を精緻に行う傾向がある(開示が認められがたい方向に動く。)といえます。

原則として,ISPの住所地を管轄する裁判所で行います。
印紙代として1万3000円。仮処分でないため,担保金は不要です。その他,郵券,実費,弁護士に依頼する場合には弁護士費用が必要です。

5 誹謗中傷行為加害者に対する措置

 

上記4の訴訟で発信者情報が開示されれば,誹謗中傷行為加害者が特定されます。
ケースによっては,敢えてここまでやらなくとも,投稿内容のみから事実上加害者が特定可能であるケースもあります。ただ,その特定が法的にも通用する(訴訟で証拠を基にした事実認定として認められる)ものかは吟味する必要があります。
加害者の特定をおざなりにして動けば,加害者に逃げられるばかりか,更なる誹謗中傷を受けるという事態にもなりかねません。
相手方のある行為に,石橋を叩く慎重さは必要不可欠であると考えます。

加害者を特定した後にどのように動くかはケースバイケースであると思います。

積極的防衛を目指すのであれば,加害者に対して通知書を送り,今後の誹謗中傷行為を抑制することが考えられます。ただ,刺激して反対に誹謗中傷行為を促進してしまうおそれも考慮する必要があると思料します。
更に,加害者に対し,損害賠償請求をすることも可能です。
理論上は,誹謗中傷行為と因果関係のある損害であれば,精神的損害だけではなく,営業損害等も認めら得るものです。ただ,仮に誹謗中傷行為がなければ,これだけの利益を得られたはずだ等仮定のうえでの請求であるため,立証の問題が立ちはだかります。
実務上,多くとも100万円程度,少なくて10万円程度の慰謝料が認められるケースが多数です。
よって,残念なことですが,損害の回復という点では,未だ不十分な状況と言わざるを得ません。
ただ,掲示板による誹謗中傷の問題においては,グローバル(世界中に把握しうる),永続性(消えない)という点から,誹謗中傷行為が人目についたまま残ってしまうことの重大性が一番の問題であると思われます。削除して,将来の誹謗中傷をできうる限り避けることこそが,一番の対応策ではないでしょうか。

このような防衛が主目的であれば,証拠をもったまま,加害者の動向を静観し,仮に再度誹謗中傷行為をした場合に切り札として出すという対処法もあります。
依頼者の方には,いざという時のお守りを持っておくと気が楽ですよ,と説明していますが,かかる安心感が,誹謗中傷問題の最重要ポイントであると考えています。

他に,内容次第では,被害届を出し,加害者の刑事訴追をはかるという方策もありますが,捜査機関の裁量に左右されることも多く,必ずしも容易な途ではありません。

弁護士に依頼したい

内容としては上記のとおりです。
弁護士として,インターネットの掲示板による誹謗中傷行為に対して,法的に対応することが可能です。
弁護士以外の誹謗中傷行為対策として,希薄化させて目立たせなくする等法的でない種々の方策が存在します。その有用性を全く否定するものではありません。現状で法的対策に限界があることも事実です。
しかしながら,そのようなその場しのぎの対応では抜本的解決には繋がらず,かえって誹謗中傷行為を促進してしまうことも多々あります。実際に法的対応をしたケースでも,事前にその場しのぎの策を弄していたことも影響し,一部結果が伴わなかったこともあります。
逃げずに毅然とした態度である程度正面から対峙する,というのが特効薬であるように思います。

弁護士費用は,税別10万円より,ケースバイケースで相談して決定させていただきます。
削除に留めるのか,最終的に加害者にアプローチまでするのか,どれくらいの規模で誹謗中傷行為が行われているのか,等の必要労力によります。

また,営業行為の妨げになっているようなケースでは,顧問契約を締結し,その契約の範囲内で対応することも可能であり,お薦めしています。
訴訟,仮処分を要しないような折衝の範囲内であれば,顧問契約の範囲内で誹謗中傷行為対策(削除等)を行うことを検討いたします。

法律顧問(顧問弁護士)
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