はじめに

最近、コロナの影響が収まりつつある中で破産する企業が急増しています。特に、コロナ融資を受けた中小企業が次々と倒産している状況です。

一方で、コロナ禍で立て直しを図り、業務拡大を目指す企業も増えています。こうした企業は積極的にM&Aを進める傾向があります。

コロナ融資を受けた企業が倒産することで、M&Aの買い手にとっては絶好の機会ともなっています。

このようにM&Aが活況を呈する中、M&A業者が勢力を拡大しています。銀行や保険会社などもビジネスチャンスとして参入・拡大を見せています。

しかし、これらの業者に頼りすぎると痛い目に遭うこともあります。実際にうまくいかない例も多く見受けられます。そこで、以下に注意点を述べます。

法的代理人の選定

弁護士の役割と重要性

M&Aにおける交渉は本来弁護士の専権業務です。弁護士は法律の専門知識を活かして依頼者に代わって交渉を行い、法的リスクを最小限に抑えます。M&A業者や銀行は法的交渉の専門家ではなく、これにより依頼者が不利な条件を受け入れるリスクがあります。

弁護士は契約内容の法的リスクや取引全体の法的適合性について助言します。M&A業者や銀行は法的な助言を行う権限がないため、契約書の作成や交渉において法的なリスクを適切に管理できないことがあります。

M&A業者や銀行の関与の限界

M&A業者や銀行の役割とリスク

M&A業者や銀行は、自社の利益を優先することがあり、依頼者にとって最適な取引を提供しない可能性があります。特に、手数料や仲介料の設定において依頼者が不利益を被ることがあります。

M&A業者や銀行は法的な専門知識を持っておらず、契約書の法的リスクや適合性についての助言が不十分です。これにより、依頼者は不利な契約条件に同意するリスクが高まります。

売り手と買い手の利益相反

利益相反の問題

M&A業者や銀行は、同時に売り手と買い手の双方を代理することがあります。この場合、利益相反が発生し、一方の利益を優先することで他方に不利益をもたらす可能性があります。

具体例

  • 売り手には高い売却価格を提案し、買い手には低い購入価格を提案することで、両者の利益が対立する。
  • 売り手と買い手の双方から仲介手数料を受け取り、業者自身の利益を最大化するために取引条件を操作する。

デューデリジェンス(Due Diligence)

徹底的な調査

公認会計士が企業の財務諸表、債務、キャッシュフローの状況を詳細に調査し、潜在的な財務リスクを把握します。M&A業者や銀行は財務デューデリジェンスにおいて十分な専門知識を持たない場合があります。

弁護士が契約書、訴訟、知的財産権、労働問題など、法的な問題がないかを確認します。法的デューデリジェンスは弁護士の専門領域であり、M&A業者や銀行では対応できない部分です。

契約書の精査と作成

契約書の重要性

M&A契約書は法的な専門知識を持つ弁護士が作成し、依頼者の利益を最大限に保護する条項を盛り込みます。M&A業者や銀行が作成する契約書は、法的な不備がある可能性があります。

売買価格、支払い条件、表明保証、違約条項など、契約書の主要な条項を慎重に確認します。これを怠ると、依頼者は不利益を被るリスクがあります。

価格評価(バリュエーション)

適正な価格評価

公正な市場価格を反映したバリュエーションを公認会計士に依頼し、過大評価や過小評価を防ぎます。M&A業者や銀行の評価は、利益相反のリスクが伴うことがあります。

同業他社の取引や市場の動向を基にした比較分析を行います。M&A業者や銀行はこの点で依頼者に不利益をもたらす可能性があります。

交渉戦略

交渉の準備

交渉前に明確な目標と戦略を設定し、譲歩できる点と譲れない点を明確にします。弁護士が同行することで、交渉中の法的リスクをリアルタイムで管理できます。

交渉の場には必ず弁護士を同行させ、法的なリスクをリアルタイムで管理します。M&A業者や銀行の担当者は法的リスクを適切に判断できないことが多いです。

リスク管理

リスクの識別と管理

M&Aに伴う全てのリスク(財務、法務、運営)を特定し、それに対する対策を講じます。M&A業者や銀行は法的リスクの識別と管理が不十分な場合があります。

保険や保証条項を活用し、特定のリスクを移転させます。これにより、依頼者のリスクが軽減されます。

事後管理

統合後の管理

M&A後の統合計画を策定し、スムーズな組織統合を実現します。M&A業者や銀行は統合後の管理において十分なサポートを提供できないことが多いです。

統合後のパフォーマンスを定期的にモニタリングし、問題が発生した場合には迅速に対応します。

まとめ

  • M&A業者や銀行の役割とリスク: 利益相反や法的専門知識の欠如に注意する。
  • 売り手と買い手の利益相反: 業者が双方を代理する場合の利益相反リスクに注意する。
  • デューデリジェンスの徹底: 公認会計士による財務デューデリジェンスと、弁護士による法的デューデリジェンス。
  • 契約書の精査と作成: 弁護士による契約書の作成と精査。M&A業者や銀行では法的な不備が生じる可能性がある。
  • 適正な価格評価: 公認会計士による公正な市場価格を反映したバリュエーション。M&A業者や銀行の評価には利益相反のリスクが伴う。
  • 交渉戦略の準備: 明確な目標と戦略を設定し、弁護士を同行させる。M&A業者や銀行だけでは交渉中の法的リスクが管理できない。
  • リスク管理の徹底: リスクの特定と対策、リスク移転の活用。M&A業者や銀行は法的リスクの識別と管理が不十分な場合が多い。
  • 統合後の管理: 統合計画の策定とモニタリング。M&A業者や銀行は統合後のサポートが不十分な場合がある。

これらの注意点を踏まえ、専門家の助言を受けながら進めることで、M&Aの成功と依頼者の利益保護が可能となります。